今は昔、小式部内侍に、定頼中納言、物いいわたりけり。それに又、時の関白かよひ給けり。局に入て、臥し給たりけるを知らざりけるにや、中納言より来て、たゝきけるを、局の人、「かく」とやいひたりけん、沓をはきて、行けるが、すこしあゆみのきて、経をはたとうちあげて、よみたりけり。二声ばかりまでは、小式部内侍、きと耳をたつるやうにしければ、此入て臥し給へる人、あやしとおぼしける程に、すこし声遠うなるやうにて、四声五声ばかり、ゆきもやらで、よみたりける時、「う」といひて、うしろ様にこそ、臥しかへりたりけれ。
この入臥し給へる人の、「さばかり、たへがたう、はづかしかりし事こそ、なかりしか」と、後に、の給ひけるとかや。
この入臥し給へる人の、「さばかり、たへがたう、はづかしかりし事こそ、なかりしか」と、後に、の給ひけるとかや。
今となっては昔のこと、小式部の内侍に中納言定頼が言い寄ってよんどころのない関係となっていたそうな。内侍にはまた時の関白も通っていた。その関白が内侍の局を訪れて内侍と一つ褥に入っていることを知らずにやって来た定頼が局の戸を叩くと、内侍の側付きの者が出てきてかくかくしかじかと事情を説明してくれたものだから、仕方なく沓を履き直して出直すことにしたのだが、少し行ったところでふと、美しく澄ませた声で経の一節を読み上げてみた。
二声めまでは、局の中でそれを聞いた内侍もきと耳を澄ますようにしているばかりであったので、同じ褥で身を寄せる関白も不思議に思う程だったのだが、少し声が遠くなっていくように四声め、五声めと定頼が去りながら経を読み上げると、内侍は、
「う……」
とため息をつき、定頼が恋しくなってしまったのであろう、関白から顔を背けてしまった。
「まったく情けなくて仕方がなかったわ」
とそのように、関白はその夜のことを後に語ったとか。


ボク、古典は結構得意なんですが、これの訳しかたがどうにもわからなくってww
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